セクハラに関する会社の義務4−窓口の適切な対応
セクシュアルハラスメントを防止するために、会社が取り組まなければならないことその4は、
「相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、職場におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがあるような場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当する否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。」
ということです。
上記のとおり、窓口が適切に対応できていると認められる例は、例えば次のようなことです。
・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
・相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
セクハラに関する会社の義務3−相談窓口の設置
セクシュアルハラスメントを防止するために、会社が取り組まなければならないことその3は、
「相談への対応のための窓口をあらかじめ定めること。」
ということです。
上記のとおり取り組んでいると認められる例は、例えば次のようなものです。
・相談に対応する担当者をあらかじめ定めること
・相談に対応するための制度を設けること
・外部の機関に相談への対応を委託すること
松戸市消防局パワハラ訴訟:元消防士4人と和解 市側が660万円支払い
松戸市消防局の元消防士4人が訓練でパワーハラスメントを受け退職を余儀なくされたとして、市に損害賠償を求めた訴訟は21日、千葉地裁松戸支部で和解が成立した。市側はパワハラ行為があったことを認め、4人に対し計660万円を支払う。配慮に欠けた言動や指導担当者の行き過ぎた行為についても遺憾の意を表明し、集中訓練の方法を再検討する。
最も過酷なパワハラを受けたと認定された原告の男性(31)は和解後、「殴ったりけったりすることが訓練なのか。消防士という職業を信じていた自分がばかみたいで悔しい」と憤りをこらえるように話した。男性は「パワハラの温床は残されたままになっていると思う。今後、和解で市が誓約したことが形骸化しないよう取り組んでほしい」と注文を付けた。
退職後、埼玉県内の自治体で消防士となった原告の男性(25)は松戸市の閉鎖性を指摘。「現在の職場での訓練は自主性が尊重され、殴られたりけられたりしたことはない。松戸市でなぜあそこまで追い詰められなくてはいけなかったのか理解できない」と話した。
松戸市の佐久間峰男消防局長は「市民の信頼を損ない、深くおわびします。厳粛に受け止め、職員一丸となって信頼回復に努めます」とのコメントを発表した。
訴状によると、4人は05年4月に採用され、06年春の集中訓練で過酷な腕立て伏せや持久走を強制され、暴言を吐かれて精神的な損害を受けたとしている。
http://mainichi.jp/area/chiba/news/20091222ddlk12040182000c.html
セクハラに関する会社の義務2−厳正に対処する旨周知・啓発
セクシュアルハラスメントを防止するために、会社が取り組まなければならないことその2は、
「職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針および対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。」
ということです。
上記のとおり、文書に規定し労働者に周知・啓発していると認められる例は、例えば次のような取り組みです。
・就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書において、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること
・職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること
セクハラに関する会社の義務1−方針の周知と啓発
セクシュアルハラスメントを防止するために、会社が取り組まなければならないことその1は、
「職場におけるセクシュアルハラスメントの内容、および職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること」
ということです。
上記のとおり、方針を明確化し労働者に周知・啓発していると認められる例は、例えば次のような取り組みです。
・就業規則その他の職場における服務規律などを定めた文書において、職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を規定し、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容と併せ、労働者に周知・啓発すること。
・社内報、パンフレット、社内ホームページなど広報または啓発のための資料などに、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容および職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を記載し、配布などすること。
・職場におけるセクシュアルハラスメントの内容および職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を、労働者に対して周知・啓発するための研修、講習などを実施すること。
セクハラに関する会社の義務
職場におけるセクシュアルハラスメントに関し、会社が取り組まなければならない項目が指針として定められています。
もしも社員がセクハラで訴えられた場合、以下の項目に対する取り組みが不十分であるならば、その分会社も責任を問われます。
≪事業主の方針の明確化及びその周知・啓発≫
指針1
職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
指針2
セクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
≪相談・苦情への対応≫
指針3
相談窓口をあらかじめ定めること。
指針4
相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。
≪事後の迅速かつ適切な対応≫
指針5
事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
指針6
事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。
指針7
再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
≪プライバシーの保護等≫
指針8
相談者・行為者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
指針9
相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
次回より、各指針の詳細について解説します。
セクハラの定義
「どこまでがセクハラで、どこからがセクハラじゃないのか、その区別がわからないよ。」
よく聞く言葉です。
セクハラに関しては法律と指針により定義がなされおり、まずはそれに照らし合わせて、その行為がセクハラに該当するのかしないのかを判断することになります。
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)
第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の規定に基づき事業主が講ずべき措置に対して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。
上記条文を補足する指針によると、以下のように解釈されます。
「職場」とは
勤務先の事業場内だけでなく、業務を遂行する場所であればここで言う「職場」に該当します。
(例えば、取引先の事務所、取引先と打ち合わせをするための飲食店、顧客の自宅など。)
「労働者」とは
正社員だけでなく、すべての「労働者」が該当します。
「性的な言動」とは
性的な内容の発言および性的な行動を言います。
性的な内容の発言の例 → 性的な事実関係をたずねること、性的な内容の情報を意図的に流布することなど
性的な行動の例 → 性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を見せることなど
「対価型セクシュアルハラスメント」とは
性的な言動が行われたことに対して抵抗や抗議をしたら、解雇、降格、減給などの不利益を受けることをいいます。
(典型例)
・事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇すること。
・出張中の車中において、上司が労働者の腰、胸などにさわったが、抵抗されたため、その労働者について不利益な配置転換をすること。
・営業所内において、事業主が日頃から労働者の性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格すること。
「環境型セクシュアルハラスメント」とは
職場において行われる性的な言動により職場環境が不快なものとなったため、労働者が働くのに支障が生じることをいいます。
(典型例)
・事業所内において上司が腰や胸をたびたびさわったため、労働者が苦痛に感じて就業意欲が低下していること。
・同僚が取引先において性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。
・抗議をしているにもかかわらず、パソコンの壁紙にいやらしい画像を表示しているため、労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと。